「増席しました!」という嘘が嫌いだ。
医療系学会のランチョンセミナー、最初から当日券を配ると決めていたのに「人気につき増席」と言う会社が嫌いだ。言葉を正確に使え、という話。

「増席しました!」という言葉が嫌いだ。
あるイベントに関連して、ちょっとモヤモヤしたことがあったので書いておく。医療系学会のランチョンセミナーの話だ。
ランチョンセミナーとは、学会の昼休みに行われる企業スポンサー付きのセミナーのことだ。昼食を食べながら製品の説明や最新知見を聞くスタイルで、医療業界では比較的一般的な形式である。私もKankaの仕事でこういった場に関わることがある。
で、だ。
このランチョンセミナー、事前に席数が決まっていて、申し込み制になっていることが多い。当然「満席です」「残席わずかです」みたいなアナウンスが出る。そして最後に登場するのが、あの一言だ。
「人気につき、増席しました!」
これは、嘘だ。
当日に配布するチケット——いわゆる当日券——を最初から用意していたにもかかわらず、それを「増席」と呼ぶ会社がいる。
意図はわかる。「人気なんだ」「競争率が高いんだ」という印象を与えたい。希少性を演出して、申し込みを促したい。マーケティング的には"あるある"の手法だ。私も業界に関わる人間として、そういう圧力があることは知っている。
でも、私はこれが嫌いだ。
「増席」という言葉は、本来「予定になかった席を追加した」という意味のはずだ。最初から当日券を配ると決めていたなら、それは増席じゃない。最初から存在していた席を、後になって「あります」と言っているだけだ。言葉が、違う。
嘘、と言い切るのは強いかもしれない。でも「事実と異なる印象を意図的に与えている」という点では、やはり不誠実だと思う。
短期の集客が、長期の信頼を削る
なぜそこまで嫌いかというと、こういう手法は必ず信頼を削るからだ。
「人気につき増席」と告知しておいて、当日に会場へ行ったら席がガラガラだったとしたら? その瞬間、その会社への信頼は一気に落ちる。医療業界は狭い。ひとりの医師が「あの会社のマーケ、嘘くさい」と思えば、それはじわじわと周囲に広がっていく。
短期的に集客できても、長期的には自分たちの首を絞めるだけだ。
もうひとつ私が気になるのは、こういう手法が「業界のあたりまえ」になっていないか、ということだ。「みんなやってるから」「前からこうだから」で積み重なっていくと、業界全体のマーケティングへの信頼がじわじわと下がっていく。それは業界全体の損失だ。
正直に言えばいいじゃないか
当日券を配ると決めているなら、最初からそう言えばいい。
「当日券を若干枚ご用意しています」「事前申し込みが難しかった方もぜひ」でいい。それで来てくれた人のほうが、よっぽど信頼できる関係になれると思う。
嘘をついてまで人を集めたい気持ちはわかる。でも、それより怖いのは「嘘をついてまで集めた人に失望される」ことだ。失望は、じわりじわりと、しかし確実に積み上がる。
医療系学会のランチョンセミナーは、本来とても価値のある場だ。最新の知見が共有されて、業界が前に進む。その場を「なんかマーケが嘘っぽい」という薄い不信感で汚してほしくない。
言葉は、正確に使ってほしい。それだけだ。
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